・・・・・・・・・・ こぼれ話Ⅱ・生活事情 ・・・・・・・・・・

◆北のパリ:ワルシャワ◆

かつて、第二次世界大戦でナチスドイツに破壊されるまで、ワルシャワは「芸術の都」「北のパリ」とも呼ばれる美しい都でした。ヨーロッパにおけるワルシャワの位置づけをよく表す次のような小話があります。
 あるとき、パリの青年がモスクワに向けて国際列車で旅立ちました。一方、モスクワの青年もパリをめざして汽車に乗りました。二人はそれぞれにワルシャワで途中下車し、パリから来た青年は「とうとうモスクワまで来てしまった!」と感慨にふけり、モスクワの青年は「ここがあこがれのパリなんだ!」と感激したとか・・・。(『善意の架け橋-ポーランド魂と大和心-』兵藤長雄著・文藝春秋)
 現在、市内で最も高い建物は、第二次世界大戦後にソ連のスターリンから贈られた文化科学宮殿です。巨大な石造りの建造物で、市内のどこからでもよく見えるので方向を定めるのには便利ですが、人々からは「ワルシャワの墓石」と呼ばれ、評判はよくありません。それで、「大嫌いな文化科学宮殿を見なくて済む方法はその展望台にのぼることだ」といったジョークもできたそうです。ポーランドは2004年5月にEU加盟を果たし、順調な発展を続けています。

旧市街近くの銀行旧市街入り口付近
旧市街近くの銀行
旧市街入り口付近

◆交通事情◆

日常の交通手段としては、バスやトラム(市電)、メトロ(地下鉄)がよく使われています。バスのチケットはメトロやトラムと共通で、市内どこまで乗っても2.4ズウォティ(約70円)です。バスは、新型のロングボディ型車両の他に、中央部が蛇腹のようなもので連結された旧型のものも走っています。バスの乗降は開いたドアのどこから乗り降りしてもよく、乗ってすぐに車内の改札機に切符を入れて印字(改札)を済ませます。でないと、時々車内で抜き打ちの検札があり、乗車券を持っていなかったり刻印をしていなかったりすると、高額の罰金を請求されるのです。メトロの場合は、駅の改札口で切符を機械に通して改札するのは日本と同じですが、降りるときには改札がなく、遊園地の出入り口のような回転バーを回して出るだけです。切符の回収はありません。
 日本と違って、流しをするタクシーはほとんどなく、電話で呼び出すラジオタクシー(無線タクシー)が一般的に使われます。車体の上部や横に大きく電話番号が書いてあるラジオタクシーは駅や空港でもたくさん客待ちしています。ラジオタクシーは基本料金が5ズウォティ(約150円)と安く信用できるようです。ホテルや空港には高級なベンツタクシーが客待ちしていますが、中には法外な料金を請求する白タクがあるので注意が必要です。市内の道路事情は、路面がよくない割にどの車もスピードを出します。とても親切で愛想のよい運転手さんが市街地を時速120㎞でぶっ飛ばしたときには、思わず両手で前席のシートにしがみついていました。日本にも昔「神風タクシー」が走っていたことを思い出しました。

トラム(市街電車)トラムとカチカ(鴨)
トラム(市街電車)
トラムとカチカ(鴨)

◆歩行者優先◆

運転者にもよりますが、ワルシャワのタクシーは概して運転が荒くスピードを出して走ります。しかし、信号のない横断歩道を渡ろうとする歩行者がいると、不思議なことに必ずと言っていいほど停止します。道幅が広く見通しがよい上に、車道の両側に広い歩道や緑地帯があることなども関係していると思われます。そんなとき日本人の悲しい性、どうしても小走りで遠慮がちに渡る癖が出てしまいますが、こちらの歩行者は、車よりも人が優先されるのが当然とでも言いたげに悠然と歩いています。
 ところで、日本で運転中に同じように横断者を見かけて一時停止すると、左右の安全確認をせずに小走りに駆け出す人がいるので、ひやっとすることがあります。対向車もこちらが横断者を渡そうとしていることなどおかまいなしに突っ込んでくることがあり、善意で一旦停止することがかえって事故を誘発するのではないかと思うことがしばしばです。歩行者優先ということに関しては、残念ながら日本はまだまだ学ぶべきことが多いような気がします。

市内中心部の道路観光バス
市内中心部の道路
観光バス

◆ショッピング◆

ワルシャワ市内には大型ショッピングモールが続々と生まれています。品揃えは豊富ですが、それなりに値段の方もいいようです。日常よく利用するスーパーマーケットでは、レジで払いと袋詰めを同時にする方式ですので、すぐに行列ができてしまいます。私たちは後に並んでいる人が気になりますが、当地に詳しい方の話では、「つい近年まで買い物のために行列するのが当たり前だったので、こちらの人は並んで待つことは平気です。後ろを気にせずに待たせておけばよい。それよりも、早くしようとあせって計算やおつりを間違えられないようにしなさい。」ということでした。
 そう言えば、たしかにこちらの人は行列上手です。レジの順番を待つとき、先頭の人のすぐ後ろは少し距離を空けて待っています。すぐ後ろにピタリとくっつくように並ばれると落ち着かないし、早くしろと言わんばかりに商品の入ったかごが横に置かれたりすると、すごく焦りますが、幸い、ポーランドではそういったマナー違反に遭遇することはありませんでした。

ショッピングモールショッピングモール
ショッピングモール
ショッピングモール

◆自己責任◆

庶民的なバザールにしても近代的なハイパーマーケットにしても、野菜や果物は量り売りが主流です。バラで並べてある野菜や果物は、色や形が不揃いで、均一ではありません。キュウリなども、真っ直ぐなものは少なく、個性的に曲がっています。このほうが自然な感じですが、注意しないとたまに腐りかけのものも混じっていますので、実物を手にとって自分の目で直接確かめてから袋に入れます。売場の中央にある計量コーナーに持っていき、計量器に乗せたらすぐに担当者が手際よくバーコードのついたラベルをはってくれます。
 形のそろった野菜やきれいにラッピングされた果物を見慣れた目には、ずいぶんおおざっぱで非能率的な売り方に思えたのですが、考えてみれば、これも欧米文化の底流にある自己責任ということの一つの形なのかもしれません。

バザールバザール
バザール
バザール

◆湯たんぽ式暖房◆

ヨーロッパの暖房方式は例外なくお湯の循環による全館全室暖房です。そのため、集合住宅では煉瓦造りの建物全体を発泡スチロールのパネルで覆って保温性を高め、その上から外壁塗装をしています。
 スチームは、アパートなどの集合住宅では工場(おそらく火力発電所)からの配給、一戸建てやタウンハウスなどではガスや油による自家給湯方式のようです。各室の壁際に備え付けられた暖房器具(カロリーフェル)の中をお湯がを循環し、徐々に室内を暖めます。いわば各部屋に自動給湯式の湯たんぽがあるようなもので、最初はこれで暖かくなるのだろうかと思ったりしましたが、なかなかどうしてこれが快適な暖房だとわかってきました。ストーブやエアコンのように強制的に暖めるのではなく、静かで自然です。火災の心配もありません。
 一旦機能すれば家中どこでも春のように快適ですが、難点はつけはじめてから完全に家の中が暖まるまで時間がかかることです。小旅行で2~3日家を空けるときに、もったいないと思ってお湯の栓を閉めて外出したりすると、帰宅してから大変です。室内がもとのような暖かさを取り戻すまでには、おそらく二日ほどかかるでしょう。カロリーフェルは静かにじんわりと暖める暖房システムなのです。ポーランドでは、およそ10月半ばから翌年3月末頃まで暖房システムは昼夜をつけっぱなしなのでした。

カロリーフェル雪中のカチカ(鴨)
カロリーフェル
雪中のカチカ(鴨)

◆ヴィラノフ宮殿◆

ワルシャワの中心からは少しはずれますが、市の南部には、ポーランド黄金時代の17世紀に建てられたヴィラノフ宮殿があります。1684年、当時のポーランド国王ヤン・ソビエスキ3世は、トルコ軍のウィーン包囲を破ってヨーロッパに勝利をもたらしました。もしその時、ウィーンがトルコ軍に征服されていたら、ヨーロッパの歴史は大きく変わっていただろうと言われています。ヤン3世はその時の勝利を記念して、離宮としてこのヴィラノフ宮殿を造らせました。バロック風の宮殿には、ヤン3世が集めた家具や美術品の数々が残されています。宮殿を取り囲む緑豊かな庭園は、パリ郊外のヴェルサイユ宮殿にも似た美しい庭園と言われています。ポーランドの黄金時代を象徴する宮殿のひとつです。

ヴィラノフ宮殿
ヴィラノフ宮殿

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文化科学宮殿

文化科学宮殿

図 書
『善意の架け橋-ポーランド魂とやまと心-』兵藤長雄 1998 文藝春秋
『ポーランドの歴史』イェジ・ルコフスキほか 2007 創土社
『ポーランド学を学ぶ人のために』渡邊克義ほか 2007 世界思想社
『旅の指さし会話帳』岡崎貴子 2004 情報センター出版局
『ポーランド電撃戦』山崎雅弘 2010 学研M文庫
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