Malbork マルボルク
◆世界文化遺産 マルボルク城
ワルシャワに向かう列車は、グダニスクを出発して1時間ほど経った頃、やや大きな川(ヴィスワ川の支流・ノガト川)に架かる鉄橋の上で速度を落としはじめた。まもなく駅に着くようだ。川の中ほどにさしかかったとき、さきほどまでのいささか単調な車窓の風景が一変した。鉄橋のトラス鋼材がリズムよく後方に流れ飛ぶ車窓に、突如、緑の樹林から頭をもたげた恐竜の如く、とてつもなく大きな赤茶色の建造物が姿を現したのだ。膨大な量の煉瓦を積み上げたと思われる巨大な塊は、くすんだ色合いから既にその役目を終えた過去の遺構であることは明らかだった。にもかかわらず、それは周囲を圧倒する存在感を示していた。中世ドイツ騎士団の居城、世界文化遺産「マルボルク城」だ。・・・・・・・・・
思いがけない出遭いから数ヶ月、見学のために漸くこの地を訪れたとき、季節は既に冬に向かおうとしていた。城塞は、晩秋の冷気をまとって、赤黒い煉瓦の巨体を横たえていた。