◆キャンセルした覚えはない!
プラハに旅行するときのことです。出発数日前になって、「帰りの飛行機がキャンセルされたらしい」と、通訳のK氏が電話してきました。「キャンセル? 私はしていない! 何かの間違いだろう?」と私。「そうではなく、航空会社から『×月×日の××便をキャンセルした。飛ばさない。』とメールしてきた。」とK氏。ここで初めて、航空会社が乗客をキャンセルすることがあるのだと知りました。でも、おかしい。天気予報ではまだまだ好天が続くとのこと。ヨーロッパに台風があるわけでもなし、「何でキャンセルなのか確認してくれ」と私。しばらくして、「乗客が少ないからと言っている・・・・。」というK氏からの電話。待っている間に「もしかすると」とは思っていましたが、不安は的中していました。
後日、「採算が合わない便は飛ばさないということはヨーロッパの航空会社ではよくあることだ」と、経験豊富な方から聞いて不承不承納得したような次第です。
◆飛行機に“乗せていただく”
ヴロツワフに行くときのことです。この日は十数名の日本人が同じ用事で行くことになり、ショパン空港で7時30分発の便を待っておりました。突然アナウンスが繰り返し流れはじめ、どうやら目的地が濃霧のために当該の便はキャンセルされたというようなことを言っているようです。航空会社が飛行機の運航をキャンセルすることはよくあることで、私もこれで三度めになりますから、別に驚きません。むしろ今回は悪天候が理由ですから納得です。じたばたするよりは、旅慣れたふりをしているほうがよいだろうと、大人しくしていました。待合室の全員は再チェックインするために一旦外に出されます。私は隣のY氏と他愛ない話をしながら、どうせ次の便に乗れるのだろうからゆっくりしようと、最後尾に並んで最後に再チェックインしました。
やがて、次便の搭乗開始時刻になりました。搭乗案内のアナウンスが流れます。しかし、おかしい?! ・・・後から待合室に入ってきた乗客がどんどん出発ゲートに消えていき、ずっと前から待っている先発便の私たちは無視されている。「こはいかに?」とて、本物の旅慣れた方にそれとなく聞きます。彼は言いました。おそらく先発便の乗客は、次発便に空席があれば搭乗できるのだと。何ということ、先発便の乗客が優先されるのではない!?、次便に空席があったら乗せてもらえる!? またしても私の浅はかな常識は覆されました。やがて、空席に乗せていただける幸運な乗客の名前が呼ばれはじめました。
そしてその時!(別に歴史がつくられたわけでもありませんが)、8時30分発の空席に“乗せていただける”乗客として、今や搭乗難民状態となった日本人の中から何と、Y氏と私の二人だけ名前が読み上げられたのです。「よかった、これで昼過ぎからの会合になんとか間に合う。」と、幸運な結果を喜ぶ反面、「何で最後にチェックインした私たちが先に・・・・?」「他の方々は?」と、疑問が次々にわいてきます。また、理由の如何を問わず、「ヴロツワフ市の重要人物とのミーティングを予定されていると聞くT氏に先に出発していただくべきではないか。」という当然の配慮も脳裏に浮かびます。Y氏も同様だったらしく、二人で、交替したい旨をアナウンスした女性に告げましたが、彼女は毅然とした態度で「ニェ!」と突っぱねます。ポーランド語に堪能な邦人もおられましたので彼らからも次々に伝えてもらいますが、依然として彼女の態度は変わりません。そのうち、出発ゲートが閉まる気配を感じ、Y氏と私は後ろ髪を引かれる思いでゲートをくぐったのでした。
座席に落ち着いた私は、一連の出来事を反芻しながら納得のいく理由を探していました。一時間後に目的地に着く頃にはようやく、「再チェックインしたとき、受付の係員が切り取った半券を積み重ねていたが、出発ゲートの担当女性はそれをひっくり返さずに、積まれたまま上から順に読み上げたのではないか」という結論に達していました。Y氏も同様の考えだったようです。真相は今もって不明ですが、これ以外に納得のいく説明が見あたりません。それにしても、あれだけの抗議の中で頑として最初のコール順を変えなかった出発ゲートの女性係員こそ、よほどの「大物」と言うべきなのでしょうか。
聞くところによると、積み残された方々がようやく出発できたのは、午後1時過ぎの便だったそうです。その間約5時間、隣接したホテルでお茶を飲みながらひたすら待つしかなかったとのことでした。後日、T氏とお会いしたときに、「先日は、先に出発するようなことになってしまい・・・」と、恐縮しながら挨拶したところ、氏が「今度から飛行機を待つときは牌とマットを持っていった方がいいですね」と、冗談っぽく言われましたので、「そうですね、今度こんなことがあったら、空港ロビーにコタツを置いて座り込んでやりましょうか!」と、思わず悪のりして答えておりました。
◆ロストバゲッジは世界の常識?!
またまた飛行機に関するトラブル。スペインへ旅行しての帰りのことです。マドリッドの空港へたどり着いた妻と私は、重い荷物を預けて早く身軽になりたかったので、航空会社の受付カウンターがオープンするのを待っていました。そこではまだ前の便の受付をしていましたので、男性係員に次の便のエコノミーはここで良いか?と、カタコトの英語と身振りで確認すると、イエスと言います。ところが、しばらく経って隣のビジネスカウンター前に行列ができはじめました。私たちの後ろには誰も並んでいません。「おかしいなぁ」と思っているうちに、私たちの便の受付時間になりました。そして、受付を担当する二人の女性係員が来るや否や、何と、目の前の大きな「エコノミー」と「ビジネス」の表示板をさっと入れ替えます。私たちが立っているところが「ビジネス」になってしまったのです。すぐにくだんの女性係員に、「前の係員がエコノミーはここだと言った」という意味のことをつたない英単語を並べて伝えますが、彼女はすでに長蛇の列となった後方を指して、「並べ」と、とりあってくれません。長時間行儀良く待っている大人しい乗客にこの対応は何だ!と、おそらく大声になっていたと思いますが、「▲◎※○●=※◆±々★〆■▽☆!!」と日本語で熱弁をふるったところ、彼女はしぶしぶ私たちが待っていたカウンターで受付をしてくれたのでした。
帰りの飛行機の中で、やっぱり言いたいことは日本語でないと言えないね、もう遅いけど英語をもっと学んでおくべきだったなどと、もっともらしいことを話しながらワルシャワに着いたのですが、ここで第二のトラブル。預けた荷物が出てきません。間もなく、これまで自分たちには縁のないことと思っていたロストバゲッジという事態に巻き込まれたことが分かりました。そして、今まで何回もお世話になったターンテーブルの隣の一角にこういう場合に届け出る事務所があることも。さらに、その事務所の周りには中に入りきれない荷物が山のように積まれていることも。全て持ち主不明(にされた)の荷物なのです。よく見ると、世界各地をさまよっているのではないかと思われるほど各種のラベルやシールが貼られたぼろぼろのトランクもあります。しかたなく事務所で手続きをして帰宅しましたが、いつ着くのかさえわかりません。妻は、思い出のある貴重な品を預け荷物の中に入れていましたので、真っ青です。その上、化粧道具一式も行方不明という事態に、「明日から外には出ない!買い物はお父さんが(私のことです)行くべし」と、不機嫌この上もありません。幸い、翌日夕方の便で私たちの荷物は無事届きましたが、それにしても直行便で、荷物を預けたのは出発の2時間も前なのに、何でロストになるんだろう。
後日、インターネットで調べたところ、ロストバゲッジは今や世界的に日常茶飯事となっており、預け荷物には貴重品を入れないこと、無くなってもよいものだけを預けることが常識なのだそうです。つまり、預け荷物はいつロストになってもおかしくないということ?。次の年の夏、スペインに行った知り合いのご家族一行も、マドリッドからワルシャワへ戻る便でほとんどの荷物がロストとなり、その日無事に出てきたのは、海水浴で使った浮き袋やビーチサンダルなど、「どうでもいいようなものばかり(当該ご家族の言葉)」だったそうです。
「今度飛行機に乗るとき、荷物がターンテーブルに乗って出てきたら、拍手で迎えてやりましょうか。」などと妻は言っています。冗談だろうとは思いますが、もしかすると本当にやる気なのかも知れません。
本ページとは無関係ですが LOT航空 ボーイング767の見事な胴体着陸をご覧下さい。